当たり前のこととして、上司は部下よりも仕事ができます。
だから、上司という立場につき、日々、部下を指導し、育成しています。
一方部下は、仕事ができないと上司に可能な限り思われたくありません。
自分の評価に関わりますし、大人になって叱られるのは誰でも嫌です。
どこの職場でも潜在的にこの状況になっています。
この状況の中、日々の仕事は流れていきます。
そして、たまに部下はミスをして上司の指導を受けることになります。
飲み込みが悪い部下や苦手分野で壁にぶつかっているときなど、場合によっては、同じ指導を何度もされることもあります。
そうすると、上司も部下も煮詰まっていきます。
上司は「どう言えばこの子に伝わるんだ?」
部下は「どうしたら叱られずに済むんだ?」
どんどん袋小路に追い込まれていく感覚です。
このとき、上司も一緒に思い悩んでしまうとストレスが溜まり、部下への当たりが更に強くなり、どんどん悪循環に陥っていきます。
そんなとき、私は、よくこういうことを言います。
「まぁ、正直、今回のことも前に教えたことだし、どういう指導で君がスルッとここを抜けるかわからん。というか、そんな魔法の言葉があるのかもわからん。だから、叱られ続けるしか無いんだよ。だって、それくらい足りないことがあるのだから。」
こう言うと、それまで「自分はなんてだめなんだ。」と思ってた考え方から「通過点として仕方ないのか」という考え方に変わるのか、大抵の部下が表情がふっと和らぎます。
「君にできてないことがあったり、やってはだめなことをしてるんだから叱られ続けるしか無い。」
この言葉を部下に伝えるのはどうも勇気がいるようです。
一方、この言葉を伝えるのはだめです。
「君がだめな人間なんだから叱られ続けるしか無い。」
違いがわかるでしょうか?
最初のフレーズは、やっている”こと”がダメと言っているのに対し、次のフレーズはやっている”人”がダメと言っているのです。
”こと”がダメであればやり方を変えればいいですが、”人”がだめと言われたらどうしようもないです。
そして、そういうことを言いたくないと思うからこそ、上司は「叱られ続けるしか無いんだよ」と言うのにためらいが出るのではないでしょうか?
自分は常に”こと”について叱っていると自信を持てるようにしておくこと。
そうすれば、追い込まれた部下をこのようなフレーズで救って上げることができますし、第一に”こと”について叱っているので追い込まれるスピードもだいぶ緩和されます。
人は一直線には成長しません。
イメージは階段です。
あるときにピョンと気づきを得て次のステージに行き、そこで順調に進んでいると思ったらまだ壁にぶつかり、ピョンと気づきを得る必要が出てくる。
この繰り返しです。
一般営業マンとして必要だった立ち居振る舞いは、その営業マンを束ねる立場になったときに必要な立ち居振る舞いとは違います。
そして、その束ねる立場をさらに束ねる立場になるとまた変わります。
そのように、行動様式をある程度の間隔で変えていくのが仕事における成長です。
人間の行動なんて簡単には変わりません。
何度も指摘され、自分で少しずつ意識できるようになって初めて変わっていきます。
初めて自転車に乗るときと同じです。
よって、常に”こと”について叱ることを意識し、できるようになるまで”こと”について叱られるのは当たり前だと部下に話してあげ、叱られることに対するネガティブな印象、感情を和らげてあげる。
これが、部下を指導するときに必要な心構えだと思います。