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コンサルタントコラム
かねがね思っていることですが、中小ベンチャー企業には競合は存在しないと思っています。
中小ベンチャー企業のビジネス規模は、世間で広く知れ渡っている企業と比べると限りなく小さい。
よって、大企業が何かしたからと言って影響を受けることはほとんどありません。
例えるなら、タンカーが行き交う海の中で、その合間を縫うように走るモーターボートです。
タンカー同士はお互いの動きをしっかり見ていないと、ぶつかってしまいますが、モーターボートはするりするりと間を進んでいけます。
そう考えたとき、ほとんどのケースにおいて中小ベンチャー企業の成長を左右するのは、競合の動向ではなく自社の状況なのです。
競合が新商品を出してきたことよりも、自社のエース営業スタッフの離職の方が業績にダメージを与える。
それが中小ベンチャー企業経営です。
では、安定的な成長を実現するには何が必要でしょうか?
優れたビジネスモデルが全く不要とまでは言えません。それも重要です。
しかし、それよりも重要なのは…管理職の登場です。
「人は、最大で7人までしか管理監督できない」ということが、様々な経営学者の論文で立証されています。
それ以上になると、チームのパフォーマンスが低下するそうです。
多くの管理職がプレイングマネージャーであることを考えると、実際は5人が限界ではないでしょうか。
そうすると、社長の下に5人の部下が付き、その5人がきちんと5人の部下を抱えられるようになってくれないと、25人という企業規模は想定できないわけです。
多くの中小ベンチャー企業はここでつまずきます。
そして、経営トップの脳裏に「もっと人手がかからないビジネスモデルはないか?」ですとか、「高いお金を積んでヘッドハントで優秀な人材を採用できないか?」などという考えが浮かんできます。
しかし、そんなうまい話はなく、新しいビジネスモデルを作ろうとしたり、ヘッドハント会社と契約したりしたお金が損失として積みあがっていくわけです。
厳しいことを言うようですが、この管理職育成は避けては通れないです。そして、そう認識していただいた方が、急がば回れで必ず最終的にメリットがあります。
新しいビジネスモデルの確立やヘッドハントでの優秀な管理職の採用に成功したとしても、人手がかからない優れたビジネスモデルは資本力のある大手が真似してきたら太刀打ちできません。
また、ヘッドハントでやってきた優秀な管理職がいつまで、どのくらい会社や社長に忠誠心を持って働いてくれるかは未知数です。
自分で育てた管理職が、他社もやっているビジネスモデルを他社より効率的に回してくれるから利益が出る。
当たり前のことを言うようですが、これが最強なのです。
当社も社員数が20名弱という状況がかなり長い年月続いていました。それが、50名を伺うような勢いになってきたのは、管理職がよりたくさんの部下を抱えられるようになったからです。
実際、ビジネスモデルを変えたわけではなく、ずっと同じビジネスをしています。
ただ、管理職を育成するに当たり、誰をそのポジションに選ぶかという点は非常に重要です。その点を解説して終わりにします。
管理職に求めるべき資質として、様々なメディアで様々なことが書かれていますが、究極的には以下の2点のみを考慮すれば良いと私は考えています。
・上司(自分)の言うことを”最終的に”必ず聞いてくれるか
・周囲に慕われるくらいの人間性の”片鱗”があるか
以上の2点です。
管理職は、もっと正確に言うと中間管理職であり、中間としてトップと現場を繋ぐ必要があります。
いろいろと意見を言う管理職でも、必ず”最終的に”はトップの決断を受け止め、それを着実に履行していってもらわねばなりません。
よって、トップと反目する恐れがある中間管理職は”繋ぐ”という観点から外れています。
また、周囲から疎まれている人は現場とつながっていないので、これまた”繋ぐ”という中間管理職の果たすべき役割が満たせません。
では、現場からの人望が厚い人でないといけないかというと、そこまで求める必要はありません。
人間性の”片鱗”と書いたのは、片鱗があり、最終的に上司のいうことさえ聞いてくれれば、育成できる余地があるからです。
よくある事例として、上記2点に当てはまらないのに、優秀だから、とか、この人を管理職にしないと悪影響の方が大きいから、といった理由で管理職に抜擢するケースがあります。
経験上、このようなケースは最終的に必ずうまくいかなくなります。現場で優秀であっても管理職として優秀とは限りませんし、優秀さが災いして上司に反抗的になったり、部下に高圧的になったりすることがほとんどです。
また、悪影響を及ぼす人はどのポジションでも悪影響を及ぼします。
管理職育成でつまずいている方は、今一度、「よしやるか!」という気持ちで管理署候補の選定及び育成に励んでほしいと思います。
そうして出来上がった経営チームは、少々の向かい風ではびくともしない強固なものになり、会社の最重要資産になります。
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