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- 課題を“売る”時代へ。ソリューション営業とは?メリット・手法・導入ステップを解説
コンサルタントコラム

モノや情報があふれる現代、単なる「モノ売り」では成果を出しにくくなっています。
そんな時代に注目されているのが「ソリューション営業」です。
これは、顧客の課題やニーズに深く踏み込み、単なる商品提案にとどまらず、課題そのものをクライアントと一緒に“解決”する営業スタイルです。
営業担当者が顧客のビジネスパートナーとして機能し、課題解決の道筋を共に描いていく――。
そんな新しい営業のあり方が、今、多くの業界で求められています。
本コラムでは、ソリューション営業の基本的な考え方から、導入のステップ、成果を上げるためのポイント、そして向いている業界や商材までを網羅的に解説します。
「売れない時代」において、営業が本来果たすべき役割を見直し、次の一手を見つけたい方にとって、実践的なヒントとなる内容をお届けします。
目次
ソリューション営業とは?
ソリューション営業とは、顧客の「モノを買いたい」というニーズに応えるだけでなく、「課題をどう解決したいのか」に深く入り込んで提案を行う営業手法です。
営業担当者は、単なる販売員ではなく、顧客の課題解決に伴走する“パートナー”としての役割を担います。
顧客のビジネス課題を丁寧にヒアリングし、本質的なニーズを引き出し、それに最適な商品やサービス、時には複数の組み合わせを提案する姿勢が求められます。
この章では、ソリューション営業の基本的な考え方や、従来型営業との違いについて解説していきます。
顧客の「課題解決」にフォーカスした営業手法
ソリューション営業とは、商品を単に売り込むのではなく、顧客の抱える課題を深く理解し、その解決につながる提案を行う営業手法です。
顧客の表面的な要望だけでなく、潜在的な課題や背景にまで踏み込むことが特徴です。
営業担当者は、課題の整理や優先順位付けを顧客と共に行い、最適な解決策を提示する“パートナー”の役割を担います。
従来型営業との違いとは?
従来の営業は、製品やサービスの特徴・価格を訴求し、顧客のニーズに合致すれば販売に至る「プロダクト志向」のスタイルが中心でした。
一方、ソリューション営業は「顧客志向」であり、課題起点で提案を行う点が大きな違いです。
売ることが目的ではなく、課題を“共に解決する”というスタンスが成果につながります。
なぜ今、ソリューション営業が注目されているのか
近年、多くの業界でソリューション営業が注目を集めている背景には、商品やサービスそのものでは差別化が難しくなってきたことや、顧客ニーズの複雑化・多様化があります。
さらに、価格や機能といったスペックでの差別化が難しくなってきたため、「この会社と付き合いたい」と思ってもらえる信頼関係の構築が、営業成果に直結する時代になったことも挙げられます。
こうした変化の中で、スペック面以外で差別化ができるとともに、信頼関係の構築にもつながるソリューション営業の重要性はますます高まっています。
この章では、その注目の理由を具体的にひもといていきます。
商品・サービスの差別化が難しくなっている
あらゆる業界で製品やサービスの機能・品質が一定水準に達し、単純なスペックや価格だけでは他社との差別化が難しくなっています。
顧客にとって「どれを選んでも大差ない」と感じられる市場では、営業担当者の提案力や対応姿勢が最終的な意思決定に大きく影響します。
そこで注目されるのが、顧客の課題を正確に捉え、それにフィットした解決策を提示するソリューション営業です。
商材そのものではなく、「なぜそれを提案するのか」という背景と納得感が、選ばれる理由になります。
顧客ニーズの多様化・複雑化
テクノロジーの進化やビジネスモデルの多様化により、顧客のニーズはますます複雑になっています。
一社一社で異なる課題を抱えており、画一的な提案では対応しきれない場面が増えています。
特にBtoB領域では、複数部門が意思決定に関与し、全体最適の視点での提案が求められるケースも少なくありません。
ソリューション営業は、こうした状況下でも個別の事情に応じて提案内容を柔軟に変えられるため、より実効性の高い営業手法として評価されています。
信頼関係が成果に直結する時代へ
商品や価格の差が小さい今、最終的な決め手で大きく影響を与えるのは「誰から買うか」という信頼の要素です。
特に高価格帯や導入ハードルの高い商材ほど、営業担当者との信頼関係が重要になります。
ソリューション営業は、顧客の課題に真摯に向き合う姿勢を通じて、「この人なら任せられる」という感情を引き出すことができます。
一方的に売り込むのではなく、共に考え、共に解決していくスタンスが、顧客との強固な関係構築につながり、結果として営業成果を生み出します。
ソリューション営業の基本ステップ
ソリューション営業では、「顧客にとって本当に必要なものは何か?」を起点に提案を組み立てていきます。
そのためには、ただ商品を紹介するのではなく、顧客の課題を丁寧にヒアリングし、真のニーズを見極めるプロセスが欠かせません。
表面的な要望に応えるだけでは、的外れな提案になるリスクもあります。
ヒアリングから提案、導入後のフォローまで、一貫して顧客視点で行動することが、成果につながる営業活動の鍵です。
この章では、ソリューション営業を実践するうえで押さえておくべき基本ステップを紹介します。
課題ヒアリング(顧客理解)
ソリューション営業の第一歩は、顧客の話を丁寧に「聴く」ことです。
ここで重要なのは、単に表面的な要望を聞くのではなく、業務の背景や意思決定の流れ、現場の悩みなども含めて広く深く理解することです。
質問力と傾聴力を駆使し、顧客自身が言語化しきれていない課題を引き出すことが、次のステップにつながります。
また、ヒアリングの際は複数の関係者から話を聞くことで、課題の全体像を把握しやすくなります。
真のニーズ・課題の特定
ヒアリングで集めた情報をもとに、顧客の課題を整理・分析し、本質的な問題を特定していきます。
顧客の言葉どおりに捉えるのではなく、「なぜそうした状況になっているのか」を掘り下げることで、真のニーズが見えてきます。
たとえば「業務効率を上げたい」という要望の裏に、属人化やITツールの未活用といった別の課題が隠れていることもあります。
ここでの分析力こそ、ソリューション営業の核心部分です。
最適な解決策の提案(カスタマイズ提案)
特定した課題に対して、汎用的な商品説明をするのではなく、顧客の状況に合わせたカスタマイズ提案を行います。
複数のサービスを組み合わせるケースもあれば、自社で解決できない部分を他社ソリューションと連携する提案も選択肢に入ります。
重要なのは、提案の“理由”を明確に伝えることです。
「なぜこれが最適なのか」「どのような効果が期待できるのか」を論理的かつ具体的に説明することで、顧客の納得度と受注率が高まります。
導入支援・フォロー体制の構築
提案を受け入れてもらった後も、ソリューション営業は終わりではありません。
導入時の支援や、実際に運用が始まってからの定期的なフォローが成果を左右します。
導入がスムーズに進むようマニュアル整備や社員教育をサポートし、課題が再発しないように改善のPDCAを継続的に回す体制を構築します。
また、導入後の成果を共有することで顧客満足度が高まり、次の提案機会や長期的な取引にもつながります。
成果を上げるソリューション営業のポイント
ソリューション営業は、単にプロセスを踏めば成果が出るというものではありません。
顧客との信頼関係の築き方や、社内外のリソースをどう活用するか、そして提案内容をどう伝えるかによって、成果には大きな差が生まれます。
特に近年では、“売る”というより“伴走する”姿勢が重視され、営業担当者にはコンサルティング的な視点や、ストーリー性のある提案力が求められるようになっています。
この章では、ソリューション営業で成果を上げるために押さえておきたい実践的なポイントを紹介します。
“売る”ではなく“伴走する”姿勢
ソリューション営業で成果を上げるためには、「商品を売る」ではなく「顧客と共に課題解決の道を歩む」という“伴走者”の姿勢が重要です。
顧客の現状や悩みに寄り添い、時には計画の見直しや方向転換を提案する柔軟さも求められます。
一方的に提案を押し付けるのではなく、常に「どうすれば顧客にとって最善か」を考え続けることで、信頼が深まり、自然と商談も前に進みます。
このスタンスが、長期的な関係性と成果の双方を生む基盤となります。
社内外との連携
ソリューション営業は、営業担当者一人で完結するものではありません。
顧客の課題に対して最適な提案を行うためには、自社の技術部門や企画部門、あるいは外部パートナー企業などとの連携が欠かせません。
特に複雑な課題の場合、営業が橋渡し役となり、社内外の知見やリソースを統合してチームで動く必要があります。
部門間の協力体制が整っている企業ほど、柔軟かつ的確な提案が可能となり、結果として受注率の向上につながります。
顧客ごとのストーリー設計と可視化
提案内容に納得感を持ってもらうためには、顧客ごとに課題から解決策までの「ストーリー」を設計し、それをわかりやすく可視化することが重要です。
たとえば、現状の問題点、導入後の変化、想定される成果を時系列で示すなど、論理的な一貫性を持たせることで、提案に説得力が生まれます。
また、顧客が社内で稟議を通す際にも、そのストーリーが資料として機能するため、社内共有・意思決定がスムーズになります。
魅力的なストーリーは、営業担当者自身の武器にもなります。
ソリューション営業を導入する際の注意点
ソリューション営業は高い成果を期待できる一方で、従来型営業とは求められるスキルや組織の在り方が大きく異なります。
そのため、単に営業手法を変えるだけではうまく機能せず、現場で混乱や成果の停滞を招くケースも少なくありません。
営業人材の育成や評価制度の見直し、組織体制の整備といった“土台づくり”が不可欠です。
この章では、ソリューション営業を導入する際にあらかじめ押さえておくべき注意点について解説します。
成功への第一歩は、準備を怠らないことから始まります。
営業人材のスキルギャップへの対応
ソリューション営業を導入する際、多くの企業が最初に直面するのが「営業人材のスキルギャップ」です。
従来の営業は商品知識やクロージング能力が中心でしたが、ソリューション営業では課題発見力、論理的思考力、コミュニケーション力、ファシリテーション能力など、より高度なスキルが求められます。
これに対応するには、OJTだけでなく、外部講師を活用した研修や定期的なロールプレイング、成功事例の共有などを通じて、段階的にスキルを育てていく必要があります。
最初から全員に完璧を求めず、段階的な育成と実践を繰り返すことがポイントです。
評価制度・営業プロセスの見直し
ソリューション営業では、即時的な成果ではなく、中長期的な関係構築や提案プロセスが重要になります。
そのため、短期の売上成果のみを評価指標とする制度では、営業担当者が本来あるべき行動を取りづらくなります。
たとえば、「課題発見件数」や「顧客満足度」「提案の質」など、プロセスを重視した指標を評価項目に取り入れることが重要です。
また、営業日報や商談記録のフォーマットも、ソリューション営業に即した形に見直すことで、行動の質と一貫性が高まります。
提案型営業に合った組織体制づくり
ソリューション営業を根付かせるには、組織全体でその体制を支える必要があります。
個人任せではなく、マーケティングやカスタマーサクセス、開発部門など、他部署との連携を前提とした体制を構築することがカギです。
また、営業が顧客課題を社内に持ち帰ったときに、すぐに検討・対応できるようなフィードバックループを整えておくことも重要です。
組織横断で顧客起点の価値提供を実現できる環境を整えることで、ソリューション営業は継続的な成果を生み出せるようになります。
ソリューション営業に向いている商材・業界とは?
すべての商材や業界にソリューション営業が適しているわけではありません。
特に、顧客の課題が複雑で、画一的な提案では対応が難しい領域では、ソリューション営業が高い効果を発揮します。
無形商材やBtoB、SaaS、コンサルティングといった分野では、顧客ごとに状況やニーズが異なるため、課題に合わせて柔軟に提案内容を組み立てる能力が求められます。
この章では、どのような商材・業界がソリューション営業に向いているのか、その特徴や理由を具体的に解説します。
無形商材・BtoB・SaaS・コンサルティングなど
ソリューション営業が特に効果を発揮するのは、無形商材やBtoB(法人向け)ビジネス、SaaS、コンサルティングのように、提供価値が目に見えにくく、顧客ごとの課題に応じて内容が変化する領域です。
これらの商材は、機能や料金だけでは他社と差別化しづらいため、「どのように顧客の課題を解決できるか」という視点で提案を行う必要があります。
営業担当者には、業界知識や課題分析力、論理的な提案力が求められ、単なる商品説明ではなく、信頼関係の構築と本質的な価値訴求が成果のカギとなります
課題が明確でない顧客が多い業界
ソリューション営業は、顧客自身がまだ課題を明確に把握できていない場合にこそ、真価を発揮します。
たとえば中小企業や新規事業の立ち上げ段階などでは、「何が問題かよくわからない」「何を導入すればいいか判断できない」というケースが多く見られます。
こうした顧客に対して、丁寧なヒアリングを通じて状況を整理し、潜在的なニーズを引き出すことで、営業担当者の提案が「気づきのきっかけ」となり、信頼と成果の両方を生み出します。
カスタマイズが必要な商品・サービス
カスタマイズが前提となる商材も、ソリューション営業に非常に適しています。
たとえばITシステムや研修プログラム、業務改善サービスなどは、顧客ごとに業務フローや課題が異なるため、テンプレート的な提案では響きません。
むしろ、顧客の状況に合わせて最適な組み合わせや導入プロセスを提案できる柔軟さこそが、競争優位性になります。
単なる「機能の説明」ではなく、「なぜこの構成がその顧客に合っているのか」というストーリーを示すことで、納得感のある商談を実現できます。
ソリューション営業で顧客の「課題解決」をしよう
ソリューション営業は、モノを売るのではなく「課題解決のパートナー」として顧客に寄り添う営業スタイルです。
顧客の本質的なニーズを見極め、最適な提案と丁寧なフォローを行うことで、信頼関係が深まり、持続的な成果へとつながります。
営業手法の変化は、組織や人材にも影響を与えるため、段階的な導入と仕組みづくりが重要です。
これからの営業には、課題解決力と人間力の両方が求められます。
今こそ、営業のあり方を見直す絶好のタイミングです。
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